地方公共団体の財政状況

1.普通会計の状況

普通会計:一般会計+特別会計(公営事業会計除く)

会計区分の異なる地方公共団体を統一的な基準で比較可能とした会計区分。

 

2.歳入

・歳入科目別の構成比、構造上の特徴

・税収の構造、傾向および適正に確保されているか

・使用量や手数料の水準は適正か

・自主財源および一般財源の割合は重要

                  自主財源           依存財源

一般財源    地方税               地方交付税、地方贈与税、地方特例交付金など

特定財源    使用料               国庫支出金

                   手数料               都道府県支出金

                   分担金                地方債など

                   負担金など

 

3.歳出

・経常的経費や義務的経費といった固定的要素の強い経費が歳出構造の多くを占めている地方公共団体は、⑴財政均衡の観点から、地方税地方交付税といった歳入が減少した場合は財政における余裕度が減少する。⑵臨時的な財政需要のへの対応が困難になる。⑶歳出削減の余地が限られるなどもんだいを抱えている場合がある。いわば、財政が硬直的な状況にある。経常収支比率などが判断指標となる。

 

・一方、投資的経費の状況も分析焦点となる。投資的経費は資本がストックとして将来残ることに着目して分類されたものであることから、将来の見通しを考える際は地域のインフラ整備の状況やニーズがヒントとなる。当該経費は一般的に義務的経費と比して削減余地は高いと考えられるが、公共事業への依存度の高い地方公共団体の場合、削減してしまうと地域経済そのものを冷え込ませる可能性もあるため、削減が期待できないケースもある。さらに当該経費を充当した事業に関して、⑴地域経済や住民のニーズを満たしていない場合⑵投資に対する経済効果が見合っていない場合⑶適切な採算に関する見通しが立てられていない場合には、完成した後も運営維持費を通じて、財政負担が重くなるなどネガティブな要素が大きくなるケースもあるので、事業内容も注目される。加えて、当該経費の大部分を占める普通建設事業費は、単独事業費、補助事業費、国直轄事業負担金に分けられるが、その内訳も注目される。補助事業は地方公共団体の財源に加え国からの補助金を投入して事業を展開することから、財政支出は少なくなるメリットはあるものの、事業を行う条件が細かく決められていることから、地域の事情にあった事業を遂行できないケースも散見される。

 

4.収支・基金

・収支は歳入と歳出の差を指す。このうち、実質収支はその年度に属すべき収入と支出の実質的な差額である。実質収支比率が参考指標となる。黒字であれば収支に純余剰があり、堅実な財政運営が行われていることになる。しかし、地方公共団体営利団体ではないので、黒字額は一定水準を維持した上で財政調整のための基金の積立、行政水準の向上、財政健全化などを通じた住民負担の軽減に充当できるかなどが財政運営における焦点になる。

 

5.地方債発行および発行残高

・真に必要な目的で借りているか

・歳入を地方債に大きく依存している場合、公債費の増加を通じて財政の硬直化を招くことになること  

    から注意が必要。

・商品性の向上、年限の多様化、資金調達源の多様化などを通じた調達コスト低下および安定化は重

    要。

・さらに、将来の財政負担につながる可能のある債務負担行為の状況にも注目。債務保証や損失補償は偶発的行為であり、顕在化した場合には財政を圧迫しかねないため注意。

 

6.公営事業会計の状況

・地方公営事業会計の決算規模は全地方公共団体の普通会計における歳出決算額の2割強に相当する規模であり分析におけるウェイトも重い。

・基本的には独立採算制ではあるものの、地方公共団体が運営を担っており、最終的な責任も負うことになる。厳しい財政状況を抱えている病院事業や交通事業をはじめとして、財政基盤への影響は注視すべきである。出資法人等も然りである。

 

7.行財政運営の状況および見通し

単に財政健全化に向けた取り組みを行っているのみならず、⑴将来の財政収支や債務償還などの克服すべき具体的な方策が示されているか、⑵財政収支見通しが現実的な前提に基づいて作成されているか、⑶財政健全化の対象として、普通会計のみならず、公営事業会計、出資団体なども勘案しているか。などに注目。行財政改革の実効性重要な分析ポイントである。PDCAサイクルのような目標と実績の検証が可能かどうか、目標と乖離した場合、迅速に対応策がとれるのかという行財政運営能力も重要。

地方債 個別要因 定性分析

1.経済成長力・景気動向・産業構造

・域内の産業構成を把握する

    製造業中心:景気の煽りを受けやすい

    公共事業中心:景気の煽りは受けにくいが、中央政府を含めた財政再建を背景とした公共投資縮小  

                              の流れからなかなか域内景気は浮揚しにくい。

・主要企業の経営状況分析:域内景気や雇用情勢の安定性を評価するため

 

2.人口動態・1人あたり所得水準・地価の動向

・人口増加率と経済成長率は一般的に順相関。特に年齢構成が偏っていない場合は税収基盤は厚くな

    る。ただし人口増加が急激だった場合は、インフラ整備による財政負担が、整備が一定程度整うま

    で発生するケースもある。

 

・人口動態は流入、流出の状況、年齢構成、就労率、就学率などの統計に着目する。少子高齢化が進む日本においては、生産年齢人口と非生産年齢人口の割合が重要。高齢化は扶助費の増加および住民税減少の可能性を示唆する。1人あたり所得、所得分布の分散なども課税所得の観点から注目に値する。

 

・地価の動向なども地域経済の状況の影響の観点のみならず、地方財政にとっては、固定資産税や都市計画税などにある程度影響を及ぼすという観点から注目される。

 

3.担税力の観点における分析のウェイト

 

都道府県:景気動向や産業構造(景気の影響を受けやすい法人関係二税【都道府県民税(法人分)と事業税(法人分)】の割合が高い。)

市町村:人口動態、地価(景気への感応度が相対的に低い固定資産税と市町村民税【個人分】の割合が高い。)

地方財政

三位一体の改革(狭義)

・国庫補助負担金の改革( 恒久的一般財源化)

・税源移譲等

交付税の改革(地方交付税総額の抑制等) 

 

地方交付税の配分

国税5税(所得税法人税等)の一定割合を交付税総額として割り当てる。

 

地方交付税の仕組み

標準財政規模=基準財政収入額×100/75+普通交付税

基準財政需要額=単位費用(測定単位1あたり費用)×測定単位(人口・面積等)×補正係数(寒冷補正等)

基準財政収入額=標準的な地方税収入×75/100+地方贈与税等

普通交付税額(財源不足額)=基準財政需要額ー基準財政収入額

 

基準財政需要額100億円

標準的な税収入を20億円とすると、基準財政収入額は75%の15億円、残り15%の5億円は

留保財源。基準財政収入額を除いた85億円が地方交付税となる。

 

20170110債券相場

  10日の債券市場は新発10年物国債利回りが横ばいだった。前週末と同じ0.055%で推移している。日銀が実施した国債買い入れオペの結果について「特に意外感はなかった」(国内証券)との声が聞かれ、反応は限定的だった。新発2年債は同0.03%低いマイナス0.240%、新発5年物国債は0.005%低いマイナス0.125%となった。超長期債は売りがやや優勢だった。11日に30年物国債の入札を控えていることが投資家の警戒感を誘った。新発20年債利回りは0.01%高い0.600%、新発30年債は0.015%高い0.750%、新発40年債は0.005%高い0.880%で推移した。長期・超長期ともにトランプ次期米大統領が11日に記者会見する予定で今後の政策などについての発言を見極めたいとの様子見ムードもあり、限定的な動きとなった模様。

20170106債券相場

 

 6日の債券市場は、新発10年国債が前日比0.005%低い0.050%で推移した。前日5日の米国時間に発表された12月のADP雇用統計にて非農業部門雇用者数の伸びが市場予想に届かなかったことや昨年11月の大統領選以降、トランプ次期政権下での米景気回復の加速や財政赤字拡大を見込んで米国債の売りが膨らんでいたことによる持ち高調整や利益確定売りによる米長期金利の低下を背景に朝方は一時前日比0.010%低い0.045%まで低下したが、午後は横ばいに戻る場面もあった。米金利時間外取引で5日終値に比べてやや上昇したほか、日経平均株価が徐々に下げ渋り、国債買いの勢いは弱まった。3連休前で上値を追う機運に乏しかった面もある。日銀が実施した国債買い入れオペで残存期間「5年超10年以下」の結果については、「想定ほど(需給の引き締まりを示す)強さはなかった」との見方が出ていた。超長期債は利回り重視の投資家からの買いがやや優勢だった。新発20年債利回りは前日比0.015%低い0.590%、新発30年債は0.015%低い0.735%、新発40年債は0.025%低い0.870%で推移した。 

20170105債券相場

  5日の債券市場は中長期債の金利が低下した。新発10年物国債の利回りが前日比0.010%低い0.055%、新発2年物国債が同0.010%低いマイナス0.200%、新発5年物国債は同0.010%低いマイナス0.115%をつけた。米国時間の外国為替市場では、昨年12月開催分のFOMC議事要旨にてトランプ次期米大統領の財政刺激策などで「参加者のほぼ全員が米景気の上振れリスクが増加したとの見方を示した」「約半数の参加者が拡張的な財政政策を見通しに織り込んだ」ことが明らかになったことから、一旦は円売り・ドル買いが出た。しかし、ドル高が米国の景気や物価を抑制する可能性が指摘されており、米景気に対する楽観がさほど強まらなかったことから米長期金利の上昇が一服したため、円相場が対ドルで上昇したことから投資家のリスク選好が後退し、価格変動の少ない債券を買う動きが強まった。財務省が実施した10年物国債入札が一定の需要を集めたことも債券相場を支えた。超長期債は前日4日の日銀の超長期買入額維持が引き続き影響してか売りが優勢で、新発20年物国債は同0.010%高い0.610%、新発40年物国債は同0.025%高い0.900%の利回りで取引されている。

20170104債券相場

 4日の債券市場は10年債が一時、前営業日比0.030%高い(価格は安い)0.070%まで上昇した。5年債は同0.005%高いマイナス0.105%、30年債は同0.035%高い0.745%で取引された。市場の予想に反して新年早々国債買い入れオペが通知されたものの、減額となっていた超長期ゾーンの買入額が据え置かれたことや5日に財務省が実施する10年債入札で十分な需要を集められず低調な結果になることへの警戒感から、持ち高調整の売りが優勢となった。後場にかけては投資家のリスク選好姿勢が一段と強まり、日米の株価が大きく上昇したことや日銀が同日実施した国債買買入オペで残存期間が「25年超」の超長期債と「1年超3年以下」の中期債の応札倍率が前回よりも上昇すると、需給の緩みが意識されて金利上昇に拍車をかけた。